【これだけ覚えて完璧】荷為替手形の仕訳
- 2014/7/9
- 簿記2級, 簿記2級3級
- 手形
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簿記2級の商業簿記で出題される論点の中でちょっと難しいといわれているものに、『荷為替手形』というのがあります。実際、仕訳を切るときに混乱して勘定科目を間違えてしまう可能性が高い論点だと思います。
しかし、手順どおり勘定科目を埋めていけば確実に正答できます。ぜひここで書いていることを覚えて参考にしてください。荷為替手形の出題パターンとしては主に3つあります。
問題文で”荷為替”というワードを見つけたら、まず、この3つのどの取引かを見極めましょう。
荷為替の取り組み
商品600円を船便で発送し、その際、取引銀行で額面200円の荷為替を取り組み、割引料4円を差し引かれた残額を当座預金口座に預け入れた。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 400 | 売上 | 600 |
手形売却損 | 4 | ||
当座預金 | 196 |
”船便”、”荷為替”、”割引”というキーワードからパターン1の『荷為替を取り組んだとき』の仕訳と判断します。
『取引銀行で額面200円の荷為替を取り組み、割引料4円を差し引かれた』の割引きの処理を書いてしまいます。
『商品を発送し...』なので相手に商品を売った、つまり絶対に売上勘定です!金額はだいたい問題文に書かれています。
最後の貸借差額は必ず売掛金になります!これはほぼ100%売掛金と覚えておいていいでしょう!
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | Step4 400 |
売上 | Step3 600 |
手形売却損 | Step2 4 |
||
当座預金 | Step2 196 |
荷為替の引き受け
商品600円の注文をし、その際、200円について取引銀行から荷為替の引き受けを求められたので、これを引き受け、船荷証券を受け取った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未着品 | 600 | 支払手形 | 200 |
買掛金 | 400 |
”荷為替”、”船荷証券を受け取った”というキーワードからパターン2の荷為替を引き受けたときの仕訳と判断する。
まずはわかりやすい『船荷証券を受け取った』の処理から書いてしまいましょう。船荷証券(貨物代表証券)を受け取った場合は、”未着品”勘定(借方)です。
『荷為替の引き受けを求められた』の処理から支払手形勘定を記入します。”引き受けを求められる”とは銀行が持ってきた為替手形にサインするって覚えましょう。手形にサインするとその額面を支払う義務が発生するので”支払手形”。
貸借差額は必ず買掛金になります!これは上記のパターン1と同じで差額は必ず掛金になると覚えましょう!
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未着品 | Step2 600 |
支払手形 | Step3 200 |
買掛金 | Step4 400 |
委託販売で荷為替の取り組み
委託販売のため、商品(原価100円、売価120円)を発送し、その際に、取引銀行で額面60円の荷為替を取り組み、割引料2円を差し引かれた残額を当座預金口座に預け入れた。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
積送品 | 100 | 仕入 | 100 |
手形売却損 | 2 | 前受金 | 60 |
当座預金 | 58 |
”委託販売”、”荷為替”、”割引”というキーワードからパターン3の委託販売で荷為替の取り組んだときの仕訳と判断します。これは単純なる特殊商品売買(委託販売)と荷為替の取り組みの複合なので落ち着いて別々に処理しましょう。
まず委託販売から書き込みます。(このページでは委託販売については省略)
次に荷為替の取り組みを処理します。割引きの処理から書いてしまいましょう。”手形売却損”と”当座預金”を書くだけ
『商品を委託先に発送した』とは、まだ委託先が商品を売り上げていないということなので”売上”勘定としてはいけません。売り上げる前にお金を受け取ったので”前受金”とするだけです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
積送品 | Step2 100 |
仕入 | Step2 100 |
手形売却損 | Step3 2 |
前受金 | Step4 60 |
当座預金 | Step3 58 |
荷為替ってなんだよ!
荷為替って何のために、てか何してんの?細かいことは知らなくてもいいんです。でも雰囲気は知っておいた方が良いです。
まず、上の説例をみると荷為替が行なわれるのは、共通の”ある状況”があるんです。
それは、「お金が入ってくるのに時間がかかる」です!そして早めにお金が欲しい場合に荷為替が取り組まれているんです。
『海外に商品を発送した』とか『委託販売』とか会社にお金が入ってくるにはかなり時間がかかりますよね。以下、海外に商品を発送したときの荷為替の流れです。
ある取引の話
日本社「あ~ぁ、アメリカ社に商品送ったのはいいけど、船便なんかで送ったから代金入ってくるの1ヶ月後とか待てないわ。今月ヤバいんだけど...どぅしよ」
???「いい方法がありますよ」
日本社「誰だ!?」
銀行様「私は○×銀行と申します。そういうときは『荷為替』という裏技を使っちゃいましょう!やり方は簡単!まずあなたが自己受為替手形っていうのを作って、即その手形を私に売ってください。」
日本社「自己受為替手形??日本語でおk。」
銀行様「アメリカ社があなたに代金を支払うことが記された手形のことですよ。指図人はあなた、名宛人はアメリカ社と書いて取立てちゃいましょう!」
日本社「それ作ったらあんたがすぐに買い取ってくれるだな!?よしッ!これで資金繰りなんとかいきそう...」
銀行様「もちろんです。その代わり、①担保としてあなたがアメリカに送ろうとしていた貨物代表証券を私に渡す、②割り引く手形の額面は商品代金の80%、③割引手数料2%、という条件をのんでいただけるなら。」
日本社「わかったわかった。はい、これ手形と貨物代表証券ね。(残り20%は掛けか...)」
ーーー数日後ーーー
銀行様「おいッ!アメリカさんよぉ!ドンドン!いるんだろぉ~」
アメリカ「誰デスか?ウルサイ。ネムイ...」
銀行様「あんたが日本さんから購入した商品、この貨物代表証券がないと受け取れないだろ?受け取りたかったらこの自己受為替手形にサインしな!」
アメリカ「ジーザス...ジャパニーズマフィア!OK,サインしますから帰ってクダサイ。」
銀行「シメシメw」
これではよくわからないかもしれませんが、こんな感じです(実際にはアメリカ社にあらかじめ了承をとりますし、こんな適当ではありません)。売り主は荷為替を取り組むことよって早期に資金を獲得できるということです。
この話の中でも書いていますが、銀行は手形の割引に手数料をとるのは当然ながら、通常、商品価額の80%くらいまでしか手形を買い取ってくれません。
なぜかというと、”日本社”が振り出した自己受為替手形は”アメリカ社”のサイン・判子がまだないからまだ法的拘束力はない。銀行は”アメリカ社”がサインしてくれるかどうかわからないものをホイホイと買い取ってくれるわけないでしょ?
そこで、貨物代表証券を担保にするわけです。もし手形にサインがもらえなくても、銀行自身が商品を受け取って売却すればノーリスクですから。その際に損失が出ないように商品代金の80%くらいなのです。きったねーなぁ銀行ッ!
この割引手形の額と商品価額の差額が、上の解き方で何度も書いている『貸借差額は必ず掛金になる』の意味です。
荷為替手形の仕訳は日商簿記2級の中でトップレベルに難しい仕訳ですが、ぜひ得意になって欲しいです。
コメント
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保証債務がイメージできません。荷為替とか自己受為替では出てこない科目ですか?
保証債務は「偶発債務」の処理です。
裏書とかして自分の手形が誰かの元に行った。→その手形が不渡りになったなど→自分が代金を払う義務発生(遡及義務)
つまり、自分は手形の債権者でも債務者でもないが、もし不渡りになったら支払う義務が発生する場合に、その遡及義務が発生する確率の価値を計上するのが保証債務です。つまりリスクを計上しているとイメージするべきです。
そのため、遡及義務が発生するかどうかで保証債務を計上するかどうかが決まると考えます。
荷為替はありえますが、自己受為替手形は「自分が受け取る側、相手が支払う側」となり実質的に単なる約束手形なので、保証債務は計上されないかと思います。もし相手が不渡りになると、自分はお金をもらえないだけですから貸倒引当金でそのリスクを計上します。
問題文に保証債務の時価は額面の2%とか時価は××円とあるのは、偶発債務の発生確率ということでしょうか?
時価という表現が保証債務をイメージできない原因なんです…
確率という言葉に語弊がありましたね。すいません。
時価とあるのは、いわゆる負債の価値という意味です。遡求義務とは将来お金を払わなくてはいけないかもしれない、という負債ですよね。この負債の価値を何らかの方法で計算して表現したのを、時価と言ってます。
その計算方法については様々で、確率計算や割引計算、よくわからない難しい計算がされているでしょう。
問題ではよく「額面の何%」計算させますね。