前回の税効果会計の記事の続き。前回、会計上の利益とそこから計算される税金額の対応を図ることが、税効果会計の目的の1つだと書きましたが、続きを確認しましょう!
会計上と税務上のズレについてもう少し詳しく
前回ズレが発生すると書きましたが、例えば、以下の条件で考えます。
- 会計上の税引前利益は100
- 税務上はそのうちの棚卸資産低価評価損25が損金として認められない
- 翌期においてこの棚卸資産は販売される。
- 税率は40%
今期において税務上計算される税金額は【(100+25)×40%=50】、会計上あるべき税金額は【100×40%=40】、となりこのズレの10が繰延税金資産として計上されます。
しかし、これが翌期に販売されると、会計上の利益は税務上の課税所得より25大きくなりますよね?会計上は25を前倒しで費用計上していたから。つまり翌期には、税務上計算される税金額は、会計上あるべき税金額より10だけ小さくなるといえます。
このようにズレが発生→解消が起こる場合、全期間でみると会計上と税務上の税金額は一致するのが通常なのです。そしてこういう場合にのみ税効果会計が適用されるということを理解しましょう。
逆に「受取配当金の益金不算入」など(税務上は益金と認められない)は永久に解消しないため、永久差異と呼ばれ、税効果会計は適用されません。
会計基準の処理・資産負債法とは
「発生し、将来解消するようなズレ」に対して税効果会計を適用すると書きましたが、現行制度上は、資産負債法という方法で税効果を計算します。重要な処理は以下の通り。
- 会計上の資産・負債と税務上の資産・負債の差額(一時差異等)に税効果を適用する
- 一時差異等が解消する期の税率で税効果を計算
- 一時差異等が解消するときに支払税金額を増減させる効果があるものだけに適用する
これらの3つ処理を完全に理解したら税効果会計を理解したと言えるかもしれません。そして前回書いた税効果会計の目的の1つは主目的でないということもすぐにわかるはずです。
なお、この資産負債法の対になる考えは繰延法といいます。この繰延法の特徴は以下のようになる。
- 会計上の収益・費用と税務上の益金・損金の差額(期間差異)に税効果を適用する
- 期間差異が発生した期の税率で税効果を計算
この繰延法は、現行制度上採用されていません。しかし、多くの簿記テキストではこの繰延法で説明されているため、間違えた理解になってしまうのです
実は前回の記事で書いた「会計上の利益と税金をうまく対応させる」というのは、制度上採用されていない繰延法の主目的なのです。
次回は資産負債法の特徴と目的を詳しく書きます。
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