税効果会計は日商簿記1級で出てくる論点のなかでかなり難しい論点の一つ。ここで完全に税効果を理解してもらいたい。間違った知識を持たないようにしよう。
まず前提としての税金計算の基本を確認!
法人税はどのように計算されるかというと、損益計算書の税引前当期純利益を別表4という計算書類に送って、そこで租税目的に沿った金額に修正する。その後別表1で税率をかけて計算されます。
スタートの金額はP/Lの利益ですが、これは会計的に正しい金額ですよね?この正しい会計的利益を算出するために有価証券とか固定資産とか各々の論点を学んでいます。しかし、これはあくまで”会計的”に正しいのであって”租税目的”に当てはめると正しいとは言えないことが多いです。
例えば、受取配当金というのはP/Lの営業外収益に計上することが会計的には正しいですが、税務上では「益金」として認識しないのが通常です。(益金不算入)
このように別表4で会計上の利益を税金計算用に修正するわけです。そのため、会計上の利益から計算される税金額と税務上実際に課税される金額にズレが発生します。
税効果会計の1つ目の目的
会計上の税引前利益と税務上の課税所得がズレることによってそこから計算される税金額も異なりますが、P/Lの末尾に計上される『法人税等』は、別表1で計算される税務上の計算額です。そのため、P/Lの税引前当期純利益と法人税等がうまく対応しなくなるわけです。例えば税率が40%だが、別表4で損金不算入という調整があると以下のようになったりする。
この「会計上の利益と税金をうまく対応させる」というのが税効果会計の目的の1つです。具体的には、税務上別表4で調整された額を、会計上で再び元に戻すというイメージです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
繰延税金資産 | 10 | 法人税等調整額 | 10 |
これで税引前利益と会計上表示される税金額がうまく対応するようになり、利益の期間比較が可能になるわけです。多くのテキストでもこのような趣旨が書かれていることが多いでしょう。
ところが、この利益と税金を対応させること、利益の期間比較を可能にさせること、は単なる税効果の目的の1つであり主目的ではあるとは言えません。本当の目的は別にあるのですが、なぜか市販のテキスト等にはこの真実が書かれていないことが多いです。
次回、税効果会計の本当の目的について。
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