間違えやすい論点
日商簿記3級で最も間違えやすい論点の一つに次のような問題があります。
毎年家賃の1年分を11月末日に毎期同額支払っている(決算日×2年3/31)。次の資料を元に損益計算書に計上される支払家賃及び貸借対照表に計上される前払費用の額を答えよ。

これをなぜ3級受験生が間違えやすいのか理由もはっきりしています。 それはズバリ『決算の流れ』を理解していないからです。 難しい話は読みたくないって人は一番下まで進めて、計算テクニックだけ見て参考にしてください。
期首から決算までの流れ
では仕訳や決算の流れを順を追って見ていきます。 「毎期同額」なので当然、前期末(×1年3/31)にも支払家賃を経過勘定処理していますね。
[×1年3/31決算整理仕訳]
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
前払費用 | 16,000 | 支払家賃 | 16,000 |
11月末日に1年分支払いなので、決算日(3/31)から考えると8ヶ月分繰り延べる必要があります。今はこれ以外は何も考えず、ぽけ〜ッと前期末に8ヶ月分の16,000円を繰延処理したとしてとだけ理解してください。
そして諸々処理されて、決算を締切り、前期の貸借対照表、損益計算書が正しく作成されたとします。 この後、次の年度に勘定科目の残高を渡さないといけません。要は×1年3/31時点の資産や負債などの残高が書かれた表が必要。これが『繰越試算表』です。
繰越試算表には絶対にB/S科目しか載せないんです。これは非常に重要なポイント!理由は簡単で、収益や費用などのP/L科目に"残高"という考えは存在しないからです。
とにかく経過勘定に関する部分だけを抜粋すると次のような繰越試算表になっているはずです。(P/L科目は絶対に載りません)
そして×1年4/1(期首)に「再振替仕訳」が行われるんですよね。再振替仕訳によって、繰越試算表は次のように変化します。
[×1年4/1繰越試算表]

[×1年4/1再振替仕訳]
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払家賃 | 16,000 | 前払費用 | 16,000 |
[その後の試算表]
期首の経過勘定科目は全部消えて、P/L科目(支払家賃)だけが計上されている状態になります。 これは前期末に繰り延べた8ヶ月分の費用です。
そして期中の支払日。必ず毎年11月末に1年分(12ヶ月分)のお金の移動があります。この取引は期中仕訳として処理されます。
[×1年11/30期中仕訳]
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払家賃 | 24,000 | 現金 | 24,000 |
この仕訳を反映させた期末の決算整前残高試算表は、次のようになっているはずです(問題文資料と全く同じ)。
既にお気づきかと思いますが、×2年3/31の決算整理前残高試算表の支払家賃40,000円は20ヶ月分の額になっているんです。前期末に繰り延べた8ヶ月分の家賃と11月末に支払った向こう1年分の家賃の合計20ヶ月分です。
本試験の精算表問題などでこの手の出題がある場合、これで引っ掛けてくることが多いんです。
つまり「当期に支払家賃を繰り延べなきゃいけない」のは理解できるけど、前T/Bの支払家賃を分母何ヶ月分で割って計算すればいいかを間違えやすい。
本問の場合、当然ながら40,000円×8ヶ月/20ヶ月を繰り延べなければいけません。上の流れでみてきたように、前T/Bの額は20ヶ月分ですから。
[×2年3/31決算整理仕訳]
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
前払費用 | 16,000 | 支払家賃 | 16,000 |
計算テクニック
なぜ"「毎期同額」の場合の経過勘定を計算する際、分母が12ヶ月ではないのか"をしっかり理解したら、あとは機械的に解けるようにしてしまおう!
- 前払費用・前受収益の場合必ず
【12ヶ月+前期に繰延べた月数】が分母になる - 未払費用・未収収益の場合必ず
【12ヶ月―前期に見越した月数】が分母になる
これだけ覚えていればOKです。
問題文から『毎期同額』を見つけたら、まず前期の経過勘定を考える。"前~"なら分母は12ヶ月超、"未~"なら分母は12ヶ月未満です!必ず!
あとはゆっくり数え間違いしないようにすれば100%正答ですな!しかし果たしてこれを計算テクニックと言っていのか...
コメント
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未払費用 未収収益の場合
【12ヶ月+前期に繰延べた月数】
となっていますが
【12ヶ月−前期に繰延べた月数】
ではないですかね?
すいませんご指摘有り難うございます!
こちらこそいつも役に立つ記事をありがとうございます(笑)
1級持ちですが、1級ではこの論点を問われることがなかったので忘れてしまっていましたww